-FPSレビュー「F.E.A.R.」-
どこまでも続く無機質空間と、AIとの知恵比べ
概要:
イーフロンティアより完全日本語版が3980円で発売中。
2005年一番の話題作だったであろう、アクションよりのミリタリーFPS。ただこれだけだとインパクトが薄いので、開発者たちが導入したのが「ホラー」という要素。 開発に当たって一番影響を受けたのが、テクモより発売されている和風ホラー「零」シリーズとのことである(欧米名 Fatal Frame)
パッケージからは「リング」をイメージするが、 開発者によると影響は受けていないとのこと。ただ、ものすごく怖いかというとそうでもない。そのほか、「Max Payne」でおなじみとなったバレットタイム(F.E.A.R.での名称はSlo-mo)が使える。
敵AIの頭の良さは一級品
Gameplay:
武器は3つまで所持が可能。登場する武器はピストル、マシンガン、ショットガンなど現実的なものと、レールガン、ニードルガンなど近未来的なもの合わせて8種類ほど。 そのほかグレネードが3種類ある。これらはメインとは別キーでアサインし、投げることが可能。
また、特徴的なものにMelee Attackがある。(格闘攻撃)
加えて、Slo-moの能力を使えるので、戦闘中に使うキーがかなり多い。3ボタンのマウスだと左手の動きが忙しいだろう。5ボタンぐらいのマウスを推奨したい。
ミリタリー色が強いが、戦闘はアクション寄り。弾薬のことはあまり考える必要がなく、豊富に手に入るので撃ちまくれる。また、Normalまでの難易度なら、物陰からSlo-mo を使って飛び出し、正面きって撃ち合っても大丈夫だろう。それ以上の難易度になると、物陰からLeanを使って覗き込み、ちまちま撃つのが基本となる。
私ははじめ、いつものようにNormalではじめたのだが、Slo-moの使用を自粛しないとメディパックがかなり余るバランスだった。なので、Jupiter EXエンジンの恩恵にあやかり、 途中から難易度を変更してHardにした。普段FPSをプレイする人なら、Hardでも問題ないと思う。変更されるのは受けるダメージ量だけのようだ。
逆に、Slo-moを封印するなど制限プレイを課せば、Normalでもかなりの難易度となるだろう。
また、AIが賢いとの前評判どおり、戦闘は面白い。2-3種類の外見の違いこそあれ、同じ兵士が延々でてくるこのゲームだが、AIのおかげで飽きるということはなかった。
こちらが隠れていればあたりをつけてグレネードを投げ込んでくるし、進入ルートが複数あるような場所での戦闘は、後ろから回りこまれる恐怖におびえながら戦わなくてはいけない。 あたりのものをけり倒してバリケードを作るし、こちらがライトをつけっぱなしにしていれば怪しんで偵察に来る。ちなみに敵がいる場所の近くでは、敵の無線を傍受できることが多いので、 「この先にいるな」と身構えることができる。このゲームは通路を延々と移動することが多いので、こういう仕様でなければ慎重派のプレイヤーはいちいち曲がり角でLeanしなければならず、 ゲームテンポが悪いと感じてしまうだろう。個人的にはよい調整だと思う。
激しく飛び散るパーティクルは、戦闘の爽快感を増す
Graphic:
設定は近未来だが、SF的なものは登場せず、ひたすら現実的な建物の中を進んでいくことになる。よく言えばリアル、悪く言えば地味なグラフィックである。FPSは普通ロケーションの変化でプレイ意欲を掻き立てようとするものだが、このゲームは最初から最後まで同じようなビルの中を進んでいくことになる。
ここまで変化が少ないゲームも珍しく、各マップごとのスクリーンショットが見分けがつかないほどである。
しかしながら、エフェクトの水準は高い。戦闘時に激しく飛び散る火花、コンクリートを撃ったときには立ち込める粉塵で前が見えなくなり、窓ガラスを撃てば ボリューメトリックライトの効果によって光の筋が差し込む。血しぶきなどのゴア表現も激しいほうにはいると思う。
ただちょっといただけないのは、柱などが完全に真四角だということ。端っこなどはポリゴン感が強く出ていて、カミソリ のように尖っている。腕を押し付けたらムダ毛処理ができてしまいそうだww
また、あまりアウトドアマップのないゲームだが、たまに屋上から遠くの景色を見渡すと、そこに乱立するのはのっぺりしたビル群。正直言ってがっかりする。
あまり外に目を向けないで、引きこもってレンガの壁に目を向けてあげよう。バンプマッピングがふんだんに施されたレンガの質感に 目を奪われるはずだ。でも端っこはカミソリエッジだが。まあこれは、こうしたほうがAIがスタックしにくいからだろうと思う。
もしくはマシンガンを連射して、壁にできる穴の立体感に感激するのもいいだろう。楽しみ方は人それぞれである。
Review
私はどちらかというとアクションよりのゲーム性が好きなので、このF.E.A.R.のスタイルは好みにぴったりであった。Slo-moを使った戦闘はとても面白く、 ところどころに出てくるロボット型の敵や、タフなヘビーアーマーとの戦闘では恐怖すら覚える。是非ハード以上の難易度でプレイしていただきたい。ステルス迷彩をまとって襲ってくるアサシンとは肉弾戦が楽しめるが、Melee Attackは使いどころがあまりなかったように思う。
残念なのは、ロケーションの少なさと、遠景のガッカリ感。私はどちらかというと、DOOM3やQUAKE4のような派手なグラフィックが 好きなので、どうしてもそちらの評価が上になってしまう。また、恐怖感を増すためなのだろうが、ヘッドライトのバッテリーがすぐ切れる。基本的に暗いので ヘッドライトの使用機会が多いのだが、バッテリーがすぐなくなるのでイライラする。軍用のヘルメットについているライトのようだが、欠陥品ではなかろうか。
また、ライトをつけたらあたり一面血の海だったりと、恐怖感をあおる演出があるが、正直主人公がかなり強いのであんまり怖くない。やはりホラー表現では、 よわっちい主人公が倒壊しかけた日本家屋を進んでいく「零〜zero〜」シリーズはすばらしかった。武器がカメラだし。
ストーリーに関しては、最後のオチがびっくりするが、最初から最後まで不明瞭な印象。パッケージの女の子「アルマ」の正体は明かされるが、続編をにおわせる 終わり方なので、続編「Project Origin」での展開に期待したいものである。2009.6.11追記 もう発売されたが、未プレイ。
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